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第51話 街の様子は… ~アグリサイド~

Author: 光命
last update Last Updated: 2025-04-27 12:36:41

ムルデの街が近づいてきた。

城塞国家の様相で、一面が高い壁で覆われている。

そのためか、中の様子は外からは伺えない。

城門も大きな構えをしていて、そこでは関所さながらの入念なチェックが行われていると聞いた。

高い城壁には憲兵が配置され、たとえ城壁を登ってもアリの子一匹入らせない厳重な警戒をしているとの話だった。

そこまで出入りを徹底していると聞いたため、何か粗相をして入れなかったらどうしようと思うと緊張する。

「何をそんなに緊張しておる

 入れなくても、そいつらを倒せばいいことじゃ」

ゾルダは相変わらず脳筋な考えをしている。

たまにはしっかりと考えているときもあるけど、大体強さは正義的な考えだ。

「マリーもねえさまの言う通りだと思うわ。

 マリーたちを止められるものはないですもの」

マリーもゾルダに影響されてか強硬派だ。

まぁ、魔族自体がそういうものなのかもしれない。

人の常識を当てはめてもとは思うが、でも今は人として行動しているのでなぁ。

あまり強引に進んで事を荒立てたくはない。

「ゾルダもマリーも頼むから自重してくれ。

 なんとか通してもらうようにするからさ」

しばらく歩くと、城門の前に辿りついた。

門は固く閉じられている。

ただそこには憲兵らしき姿は見当たらなかった。

「あれー、ここに入門をチェックする人たちがいるはずなのになぁー」

フォルトナも辺りを見回すが、本当に誰もいないようだ。

「本当に誰もいないようだな。

 勝手に入っていいんだろうか……」

大きな城門の脇にある出入り用の扉を開くかどうか確認してみる。

「ギィー……」

鍵などはかかっておらず開いているようだ。

「入れるようだねー」

フォルトナは周りをさらに確認しているが、人の気配はなかったようだ。

普段なら城壁の上にいる憲兵たちも見当たらないようだ。

「誰もいないのであれば、入っていいのじゃろぅ

 さっさといくぞ」

ゾルダは出入り用の扉を開けてズカズカと中に入っていく。

「ちょっと待てって

 普段と違うってことは何かあったってことだろ」

そう言って、ゾルダを止めようとするが、お構いなしだ。

どんどんと先に行ってしまう。

マリーもそれについてさっさとついていく。

俺とフォルトナは慎重に周りを確認しながら、恐る恐る扉の中へ入っていった。

分厚い城壁の中を潜り抜け、街の中へ出ると……

そこはよどんだ空気が
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